曇り空で雨も降らなさそうな草刈り日和
6:40 川のヨシ刈りにパパは出かけた。
川の草刈りには地下足袋を履いて出る。
大きな石がゴロゴロしているし、足を滑らせたら、命に関わる。
地下足袋は優れもので、足の踏ん張りが効く。
2週間後には、刈ったヨシ焼きが組まれている。
村は川に沿って集落が拓けてきたから、どの集落も川を抱えている。
集落ごとに線引きをして川のヨシを刈るが、下流に当たる集落は戦々恐々としている。
大雨が降って先に刈った集落の草が流れてきた日には、迷惑を被るからだ。
問題がある。
つまりホタルの住処を奪うことになるからだ。
4、5年前まではそのことで、ヨシ狩りの日程に意見を言う御大もいらしたわけだけれど、今は誰も口を出さない。
ホタルのために6月末までよし刈りを伸ばせば、雨降りの順延になって、勤め人は参加できない人が出てくる。
十数年前だと思うが、順延に続く順延で、ついに川刈りに4名しか出ないことがあった。
この時は一日中かかって、夕方帰ってきたパパは大の字になって起き上がれなかった。
森林組合に勤める人の奥さんの話にも、ご主人もご同様だったそうな。
とにかく川のよし刈りは重労働であるし、危険も多い。
蛇なんぞ出てきた日には草刈り機で、チョ〜ンとされるそうだ。。。
まだ川刈りが6月末に組まれていた頃のことだ。
夜8時過ぎに事務所を出たパパは、横を流れる川一面が乱舞するホタルだったそうだ。
「生まれて初めてあんな美しいものを見た。見とれて動けなかったなあ」と言った。
家の前や横が田んぼばかりだった頃には、田の上を舞うホタルも毎夜のように見かけたが、近頃は家の裏に回った時に見かける程度でしかない。
もちろん公民館主催の「ホタル鑑賞会」みたいなバスも出されるが、どこか他のところへ行く。
川の草さえ刈らなければ、田舎暮らしの醍醐味、ホタルの乱舞を見ることもできるのだけれど・・・
さてパパが帰ってくるまでは、私は心配で、まとまったことができない午前中を過ごすのである。